ニュース - 2019年07月10日
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parkrun — 人生を変えた、深い愛と仲間達

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ミグエルが初めてparkrunに参加したのは2015年の11月でした。その日は蒸し暑くベタベタと肌にまとわりつく様な日だったと覚えています。

 

彼は不快な時にいつもするブクブクと泡を口で吹く様な音を立て、ハエにもしつこくまとわりつかれていたのです。その上、不快感を誇張するかの様に、フィニッシュ直後にこけてしまったのです。ミグエルはその時17歳。知的障害と重度の自閉症と診断され、語彙も豊富にある訳ではなく、その上に言葉をはっきりと区切って発音する事も困難でした。何かを伝えたい時には唸り声を出したり、大声をあげたりしていました。また周りに眉をひそめられてしまう様な事を口走ったり、非常識な行動をとったりする事もありました。

 

parkrunを始める以前に、ミグエルはシティ・トゥ・サーフ(City2Surf)を何度か走り、自己最高2時間15分を記録していました。けれど、シティ・トゥ・サーフは年に一度しかないので、私はミグエルが一年を通じて打ち込めるイベントを探していました。私と夫のエリエルは趣味でジョギングをしていて、2014年の終わり頃、parkrunがパラマタで行われていると知りました。

 

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パラマタのparkrunへは車で40分もかかり、そう頻繁には行けなかったので、2015年5月、ポンズにparkrunがやって来たのは、願ったりかなったりでした。ポンズは、車で15分のところにありました。ポンズparkrunのイベントディレクターである、リオとジュン・ランビーノという気さくな人達に出会い、初めの2、3ヶ月は頻繁にボランティアをしました。これは、私がミグエルを連れて参加する前に、ボランティアをしてみる事で、ポンズの人達にどれだけ馴染んでいけるのか、受け入れてもらえるのかを推し量るものでもありました。

 

もし、ミグエルがコースを走っている途中で感情のコントロールができなくなり騒ぎ出してしまったら、周囲の人達に何と思われるだろうとか、きまりが悪い状況になってしまうのが怖いという気持ちは、知的障害のため特別支援が必要な子供がいる親なら一度は感じた事があると思います。300人もの人が押し合いへし合いしている中、走るのを想像してみてください。心臓はドキドキと早鐘の様に打ち、肺は火がついた様に痛み、脇腹も痛み始める。誰にとっても身体全体で受ける感覚に飲み込まれそうになるでしょう。自閉症を持つ者には、この感覚はもっと酷くなります。フィニッシュで声をかけてくれるボランティアの人達に対してさえ、ミグエルは興奮してしまい、そんなに乱暴にと思う程の勢いでフィニッシュ・トークンをむしり取ったりしてしまう。こんな状態では、フィニッシュ・トークンと自分のバーコードをボランティアの人に渡しスキャンしてもらう事なんて、とてもできはしない状況でした。けれども何回もparkrunをこなすうちに、私達とミグエルは、どうやって居心地の悪さを軽くしていけば良いのかを徐々に学んでいきました。

 

エリエルと私はミグエルの行動をどうコントロールしていけば良いかと考えました。まず私がミグエルのフィニッシュ・トークンを受け取り、彼のバーコードもスキャンしてもらうこと。ミグエルの息を整え、心拍数を落とすため、最後の100メートルは速度を落とし、歩いてフィニッシュする。これでだいたい乗り切れましたが、やはり時々はすべてがうまくいかず、只々辛いだけの日もありました。そんな中でも、ミグエルがparkrunを楽しみ始めているという事は確かに感じられたのです。

 

走るのが苦しくなったら、歩いてもいい。途中で必ず水分補給をする。走るのは大変でしたが、どうにかこうにか走り続けられる様になりました。ミグエルの体重は減り、持久力もつきました。毎週土曜の朝6時、ミグエルはちゃんと支度をし、5キロを走りに出掛けるのを、今か今かと待つ様になりました。ミグエルはparkrunでいつも会う人達、特に胸に名前のシールを付けているボランティアの人達の名前を覚えていきました。毎回走り終えた後に近くのカフェにより、結果を確認するのですが、そこでいつも注文するホットココアとシナモンロールも彼の楽しみの一つになりました。

 

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それから2年、ミグエルは先週の土曜、19歳になる2週間前に、ついに参加50回を達成しました。

 

ポンズの仲間達に受け入れられ、愛情を注がれ、支えられてこなければ、これまでの50回もの走りは成し遂げられませんでした。ミグエルはこの50回目のparkrunを、前回までの自己ベストを11秒縮める34分03秒で走り、フィニッシュラインにいた仲間達みんなからハイタッチをしてもらいました。こんな盛り上がった状況下にも関わらず、ミグエルは落ち着いてフィニッシュ・トークンを受け取り、彼のバーコードと共にスキャンしてもらうことができました。彼の自己ベストが、41分14秒から大幅に変わっただけではなく、parkrunの朝、何が起こるか分からないという予測不可能な状況にどう向き合うか、というもっと大事な部分で、彼は大いに成長したのです。

 

ミグエルの参加50回達成のお祝いは、誕生日のお祝いのようでした。『50回達成!』とプリントされた風船あり、額に入れられた証書あり。ケーキや果物までもparkrunの仲間達が用意してくれ、皆に祝ってもらいました。ミグエルは障害者のためのデイ・プログラムに週5日通っているので、毎週土曜のparkrunはこの日常からの息抜きの場となります。彼が一般社会に安心して参加し、一員として受け入れられる場なのです。parkrunは、家族みんなで毎週楽しく参加でき、共有できる時間です。parkrunは完璧を追うものではなく、皆がそれぞれの高みに向かって突き進んで行く機会を与えてくれるものです。

 

parkrunが週のうちの一番の楽しみだなんて、こんな簡単な言葉では表せられないぐらい、私達の中では大事なものになっています。週一で巡ってくる規則性、日差しを浴びる楽しみ、体を動かす事、そして走る事を楽しんでいる仲間達、これら全てが私達の人生を大きく変えてくれました。parkrun好きが高じて、私とエリエルは、ポンズparkrunのランディレクターもするようになりました。そして、我がポンズから枝分かれしたガルストンparkrunでも人手が足りない時は、お手伝いに行っています。

 

私達の次なる目標は参加100回達成。parkrunにゴールはありません。あるのは可能性と終わりなく続いて行くマイルストーンです。

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いつもお世話になりありがとうございます   毎回楽しく?走ってますがなかなか30分切れません   今年中にはなんとか……   今後ともよろしくお願いします。   やすひろ 

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